「リクルートの営業マンのようにモチベーションを上げるにはどうしたらいいでしょうか?」
これもよく聞かれる質問です。
「やっぱりインセンティブをたくさん出すことでしょうか?」
そう聞く人も少なくありません。
そんなときわたしは
「はっきり言ってお金だけでやる気は出ません。出たとしても一時的なものにすぎません。」
と答えます。
実際、リクルートの営業マンはびっくりするぐらいよく働きます。
自他ともに認める「なまけもの」のわたしですら、リクルートにいるときはものすごく働きました。
もちろん、鬼のような上司に脅されて働いていたわけではありません。
「なんだかわかんないけど働いてしまった」 というのが一番しっくりくる表現かもしれません。
リクルートでもインセンティブはあるし、それが励みにもなるし、もらってうれしいことはまちがいないのですが、まるで中毒症状のように仕事をするのはそれが理由ではありません。
では、いったいなぜリクルートの社員はよく働くのか?
複合的な要素があるので一概に「これ」というのはむずかしいと思いますが、ヒントのひとつになりそうなものに「表彰状」があります。
わたしがいた部署では、期が終わると目標達成会という打ち上げパーティーが行われ、そこでリーダーからがんばった人に表彰状が贈られるのが習慣でした。
この表彰状がただものではないのです。
文章はすべてリーダーが自分で考えます。
内容は、表彰される人がいかに目標を達成するためにがんばったか、どうやってピンチを乗り越えたかといったエピソードはもちろん、この期間にどれだけ成長したかといった話や、あえて成長する前がいかにひどかったかなど、その人のキャラクターをふまえた話を笑いの要素も加えながら作っていきます。
ひとりひとりていねいに書いていくので、かなりの手間と時間がかかります。
それも通常業務が終わってからつくるので、作業が深夜におよぶこともあります。
メンバーに対する「思い」がなければできる作業ではありません。
先日、わたしのクライアントさんに目標達成会で表彰状をつくって渡すことを勧めました。
このクライアントは日本でも有数の大手企業で、もともとまじめで固い社風です。
とくに、わたしが担当したプロジェクトチームは、経験の浅い人と伸び悩んでいる人を中心に集められたチームで、スタート当初は営業会議で発言を求めても、ほぼ全員がうつむいて小さな声でボソボソしゃべるような状態でした。
しかし、半年かけてチームで力を合わせるマネジメント手法を身につけたことによって、リーダーとメンバーの関係がどんどんよくなっていき、じょじょに笑いも出るようになり、3ヶ月もすると見ちがえるように積極的な発言が飛び交うようになり、半年後の売り上げは目標の4倍を達成するまでに成長したのです。
これだけ劇的に変化したプロジェクトチームの目標達成会であれば表彰状もいけるのではと考えての提案でした。
その結果は?
わたしの想像をはるかに上回るものでした。
表彰状の内容については、あえて細かい指示を出さずにリーダーたちにおまかせしたのですがこれが素晴らしかった!
おそらくこんな表彰状は書いたことがないのはもちろん、自分がもらったこともないはずなのに、リーダーが感じた営業マンそれぞれの半年間の成長が、象徴的なエピソードとともに語られていて、しかもしっかり笑いもとれる内容になっていたのです。
そうとう時間がかかったことは容易に想像ができました。
わたしが代読して営業マンに表彰状を渡す役目だったのですが、はじめて表彰状をもらった営業マンが思わず口にした言葉がとても印象的でした。
「こんなにたくさん書いてくれたんですか・・・」
リーダーはわたしに言いました
「はじめて、営業マンの成長を自分のことのように感じました。」
このクライアントの目標達成会は最高の盛り上がりとなり、わたしにまでサプライズで「感謝状」をくれるという演出をしてくれました。
ここにたくさんのヒントがあります。
リーダーの仕事は、営業マンのモチベーションを上げることではありません。
リーダーの仕事は、メンバーがモチベーション高く仕事ができる「環境をつくる」ことなのです。
モチベーション高く仕事ができる環境というのは
・ひとつの目標を力を合わせて追いかけている
・自分のがんばりを見ていてくれる人がいる
・自分の成長をいっしょに喜んでくれる人がいる
という環境のことです。
もし、あなたがリーダーの立場にいるのなら、モチベーションの低いメンバーに頭を悩ますよりも、メンバーがモチベーション高く仕事ができる環境をつくるために自分に何ができるかをもう一度考えてみてください。
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