2016年4月14日木曜日

できる人は教えるのがヘタなのでしょうか?



営業チーム強化コンサルタントの庄司充です


前回のメルマガで紹介した渡瀬さんの新刊

「超一流の 相手にしゃべらせる雑談術」


を読んでいるときに、ふと思ったことを書きます。


渡瀬さんの著書はどれも「営業に笑顔はいらない」「電話はテンションを
上げずにしゃべる」など、独自の視点でとらえたノウハウをわかりやすい
文章でまとめたもので、わたしもすごく参考になることが多いのですが、
今回のテーマである雑談については、私自身はこれまで真剣に考えたことが
ありませんでした。

それはおそらく、これまでとりたてて雑談でこまったという経験が
なかったからなのでしょう。

雑談を、スキルとして意識したことがなかったのです。

だから、雑談のスキルを知りたいという人が少なからずいるということには
ちょっとびっくりしてしまいます。

すると頭のなかに、こんな問いがうかんできたのです。

「では、そんなわたしは、雑談がうまくできずに悩んでいる人に
わかりやすく教えることができるのか?」

ちょっと想像してみましょう。


もしもわたしが誰かに「雑談って、どうすればいいのですか?」と
聞かれたとしたら、おそらくまっさきに浮かぶのは
「えっ?なんでそんなこと聞くの?」という思いでしょう。

たとえ、むりやり答えたとしても「何も考えずに普通に話せばいいだけだよ。」
というような抽象的でざっくりした答えになってしまうと思うのです。

自分が意識してやっていたわけではないから、悩んでいる人の気持ちが
わからないし、教えようと思っても自分でもどうやってできていたのか
わかっていないのです。

で、話はここからです。

そこで、ふと思ったのです。

「世の中の経営者や営業リーダーたちが悩んでいるのもこれと同じ現象なんだ・
・・」と。

わたしのセミナーや研修に参加していただく人たちを見ていても、
営業の責任者になる人の多くは、自分が売れる営業マンだった人たちです。

行動力にすぐれ、自らいろいろな工夫をして、直感的に営業の精度を
上げていって高い実績を出せるようになったタイプの人たちです。

本人たちにすれば、夢中でやっていたらいつの間にかできるようになっていた
というのが本音でしょう。

しかも、自身をそんなに優秀な人間だとは思っていない謙虚な人が多いので、
売れない部下を見たときに、たとえばこんな思考になってしまうのです。


自分のようなふつうの人間でもがんばったらできた



教えると言っても、口で説明するのはなんだかむずかしい



でも、自分ができたのだから誰でもできるはずだ



数をこなして経験を積めばいいだけだ



なのに、どうしてできないのか?



行動量が足りないだけじゃないのか?



ということは、やる気が足りないだけじゃないのか?


で、けっきょくこのように「やる気の問題」という強引な理解で自分を
納得させようとしてしまいます。

その結果「もっとやる気を出せ!」という安易な叱咤激励になって
しまうのです。

しかし、残念ながら、やる気を出せと言われてやる気になる人は
ひとりもいません。

むしろ、やる気を失っていくだけです。

ハッパをかければかけるほどチームのモチベーションは下がっていく、
ほんとうに多くのリーダーたちがこのパターンにはまっています。

では、どうすればこのパターンから抜け出すことができるのでしょうか?

そのために、とても効果的な方法があります。

それは、「行動分解」という方法です。

行動分解というのは、できる人がやっている一連の行動を分解して、
ひとつひとつ言語化していく作業のことです。

たとえば

担当顧客をうけもったら

・まず、データで顧客の基本情報を調べる

・HPを見て情報を収集する

・前任者に先方担当者の特徴を聞いておく

etc

といった具合です。

さらに必要に応じて

・基本情報で把握しておく重要な項目は何か?

・HPでとくにチェックするのはどのページか?

などと掘り下げて行きます。

めんどくさいように思われるかもしれませんが、これが想像以上の成果に
つながることがよくあります。

これは、わたしのクライアント企業でビジネス電話の訪問営業を
やっている会社で実際にあった話なのですが、売れている営業マンの
行動分解をしてみたら、新規の会社に訪問した場合に、担当者に会えなくても
必ず事務所で使っている電話機をチラッと見てメーカーと型式とおおよその
使用年数をメモしていることがわかりました。

ただ、その人にとってはあたりまえのことすぎて、わざわざ教えるような
話でもないと思っていたのだそうです。

ところが、成績の悪い営業マンに聞くと、なんと5人中4人が
電話機を見てメモしておくという作業をしていませんでした。

行動分解をして、できる人とできない人のやっていることを比較していくと、
こうした細かいちがいがたくさん出てきます。

そして、そのちがいのほとんどは意識すれば誰でもできるレベルのことなのです。

実際にこのクライアント企業の売れない営業マンたちは、売れてる営業マンが
やっていた行動をひとつひとつ確認しながらマネをすることで、4か月後には
全員が目標を達成することができました。

つまり、気合やカンといった暗黙知で語られがちな営業の仕事を、
できるだけ言語化して形式知にするだけで、メンバーによるバラつきが減り
チームの底上げをすることができるということです。

しかも、できなかった人が、自分ができていなかった理由を理解した上で
できるようになると、渡瀬さんの雑談のように、教えることに関しては
もともと無意識にできていた人よりもうまいということがよくあります。

こうしてチームにいいサイクルが生まれて、よりいっそうメンバーが
育つ強いチームに育っていくのです。