2014年7月28日月曜日

優秀なリーダー像って、どんな人?





とつぜんですが、ジェットコースターに乗るのは好きですか?

わたしは、とても苦手です。

ついでに言うと飛行機も苦手だし、のんびり楽しいはずの観覧車ですら乗りたくありません。
高いところがきらいということはもちろんなのですが、正直言って不安でしょうがないのです。

何が不安なのかって?  

じつは・・・  こわれるんじゃないかと思ってしまうんです。

つくった人や整備をしている人にはまったく失礼な話だと思うのですが、人間誰だって完璧な人はいないでしょう? たまには調子の悪い日だってあると思うんですよ。

自分のことを考えたって、1365日 絶好調ってわけではないし、「今日はなんだか調子悪いなあ・・・」っていうときもあるじゃあないですか。

ほとんどの人がわたしよりはマシな人だとしても、それでもやっぱりミスすることはあると思うんですよね。

とかなんとか、そんなマイナスなことばかりが頭に浮かんできてしまってとてもじゃないけどわざわざお金を払って乗ろうなどとは思えないのです。

まあ、いくらわたしがヘリクツを言っても乗るのが楽しくてしょうがないような陽気な人たちからすれば「小心者」「臆病者」と笑われるだけだと思うのですが、意外とこの心配性の性格、ことビジネスにおいては悪いことばかりでもなさそうなのです。

わたしの社会人生活をふり返ると、プレーヤーとしてよりもチームリーダーとしての実績のほうが圧倒的に高いのですが、どうやらそこには「心配性」がプラスに作用しているようなのです。

一般的に優秀なリーダー像って、どんな人を想像しますか?
アンケートをとったわけではないのでわかりませんが、

・楽観的で
・度胸があって
・行動力がある

というように、豪快な人物像を抱く人は多いのではないでしょうか?

ところがわたしの場合、ジェットコースターや飛行機に限らず、仕事においてもつねに悪いことが起きるのではないかと考えてしまうような悲観的で臆病なタイプです。

だけど、ビジネスとジェットコースターでは決定的なちがいがあります。

それは・・・

事前に手を打っておくことができるということです。

たとえば

メールで作業内容は伝えたけど、作業の目的はメンバーにちゃんと理解されてるだろうか? と心配になれば、念のためにもう一度電話で確認しておくことができます。 
メンバーは期限に間に合わせるとがんばってくれてるけども、万が一のために、期限を延ばせないか顧客にもう一度だけ交渉してみようということもできます。

つまり、心配性であるがゆえに

・いつも最悪のことを考える
・打てる手は打っておく
・あとはまかせる

という行動パターンでつねに動いていたのです。

こうして無意識のうちに、いつもできるかぎりの防御策を打つくせがついていて、それが功を奏していたようなのです。

さらにビジネスの場合は、実務は部下にまかせていてもつねに途中経過を確認することはできるし、状況がよくなければいっしょに策を考えることもできます。

どう考えてもまだまかせてはいけない人に丸投げして、途中ほとんど状況を把握することもなく最終結果だけを見て激怒している人がいますが、わたしには信じられません。

何かの本にも「悲観的に計画を立てて、楽観的に行動することが大事」という意味のことが書いてありましたが、まったく同感です。

わたしの釣り仲間に、こんな人がいました。
仮にAくんとしましょう。
Aくんはわたしよりも釣り歴が長く釣り場にくわしいので、いっしょに釣りに行くときにはいつも彼がリーダーシップをとっていました。

ある日、初心者の友人を同行したときのこと、まだ遠いけども台風が発生したという情報もあり、わたしは今日は安全な場所にしたほうがいいと主張したのですが、大物を釣りたくて仕方がないAくんは「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言って聞かず、けっきょく初心者の友人を連れて沖のハードな磯に乗ってしまったのです。
結果、危うく全員流されそうになりました。

友人はそれ以来、釣りに行かなくなりました。

そのときわたしは、はっきりと確信したのでした。

「チームを預かるリーダーは、心配性なぐらいでちょうどいい!」

追記
そんなわけで、わたしはガシャンと身動きできないようにされて自分では何の手を打つこともできないジェットコースターがきらいなのです。
ちなみに、あなたのまわりの人にもジェットコースターが好きかどうかを聞いてみてください。
おそらくリーダーとして信頼をおける人ほど「きらい」と言うはずです。(はいはい、そうです、言い訳です。)

2014年7月14日月曜日

営業マンは売ってはいけない!



営業チーム強化コンサルタントの庄司充です


「売らなくていいから。売っちゃだめだよ。」
わたしがクライアントの営業マンによく言うセリフです。
なぜ、そんなことを言うのか不思議に思うかもしれませんね。

でも、新商品を扱うときや新規の市場にアプローチをかけるときには絶対に必要なことなんです。

営業コンサルタントの仕事をしていると、ほんとに多くの経営者が、商品を用意して目標をもたせて、あとは営業マンにまかせれば売れると思っていることに驚きます。
新しい営業マンを何人も採用して、そのまままかせてしまうところすらあります。

売れるかどうかは営業マン次第だと思っているんですね。
大事なのはいい営業マンを見つけることだと思っているんです。

その結果、1ヶ月もするとどこでも似たようなことが起こります。

営業マンから

「○○業界に集中的にアプローチをかけたのですが、反応がよくありませんでした。」
「○○地区では、ほとんどニーズがありませんでした。」

というなんだかよくわからない報告がなされ、その結果について責任のなすりあいがはじまるのです。

経営者「もっと訪問件数を増やすべきじゃないのか!」
営業マン「件数は回っているんですが、商品力が弱いんです!」

はっきり言って、今の市場で新しい商品をいきなり営業マンに売りに行かせて売れることなんてめったにありません。 行けば売れた昔の市場とはちがうのです。

ほんとに多くの会社がこのかん違いをしているので、声を大にして言いますね。

商品を売るために必要なのは

"売れる営業マンを見つけること"ではなく、

"誰でも売れる方法を見つけること"です。

だから、はじめから売ろうとしてはいけません。
はじめから売ろうとするとかえって売り方がわからなくなってしまいます。
売れたかどうかよりも、なぜ売れるのか?なぜ売れないのか?が重要なのです。

会社が「誰でもいいから売ってこい」と言って、営業マンが「いいものだから買ってください」と言っているような営業のやり方は、モノがあふれかえっている今の成熟市場では絶対に通用しません。

成熟市場でモノを売るために必要なことは

「○○な条件のお客さんは」
「○○で困っている」
だから
「この商品の○○な価値が役に立つ」

というストーリーです。
これを「想定ニーズ」と「提供価値」といいます。

たとえば空気清浄機なら、「これは業界一の性能を持ったすごい空気清浄機です。」と言ったって誰も振り向いてくれません。

「大通り沿いの商店は」
「商品が汚れやすくて困っている」
という想定ニーズがあって

それに対して
「業界一の浄化能力を持つこの空気清浄機を置けば、商品が汚れにくくなってそうじが楽になる。」という価値を提供できる といったストーリーが必要なのです。

ストーリーがあって、はじめて顧客が決まります。
顧客が決まってはじめて本格的な営業活動がスタートするのです。

ストーリーを見つけるために必要なのが、まず市場の声を聞きまくることなのです。

類似製品や他社製品を使っているところがあれば、
「何に困っていたのか?」
「興味を持ったきっかけは何だったのか?」
「その商品に決めたポイントはどこだったのか?」
「使ってみてどうだったのか?」

聞きたいことが山ほどあるわけです。

この、市場の声を集めてストーリーを見つけるという工程をすっとばして、いきなり売りに行くから売れないのです。
いきなり売りにいってお客さんから聞けるのは「けっこうです!」という冷たい一言だけです。

数人の営業マンで手分けして市場の声を聞きまくって、情報を共有してデータ化していけば、1ヶ月もするとストーリーが見えてきます。

そのストーリーが見えてはじめて、その人たちにどんな伝え方をすれば理解してもらえるのか?を試すフェーズに入っていくことができます。
こうやって"誰がやってもある程度の確率で売れる"というパターンをつくっていくのです。

手間がかかると思うかもしれませんが、売れるパターンをつくってしまえば営業マンのスキルに依存する必要がなくなり、経営的には圧倒的にリスクが少なくなりますし、何より売れない商品をダラダラと売り続けるような愚を犯すこともなくなります。

売るのではなく、売れ続けるパターンをつくる
はじめはパターンをつくるために実験をくり返す

そのためにも必要なのがわたしがお伝えしているマネジメントのスキルなのです。

2014年7月7日月曜日

リクルート式:ビジョンはチームの行動にも明確な基準を与える



営業コンサルタントの庄司です

サッカーワールドカップ、日本代表は残念ながら予選リーグで敗退してしまいました。

すっかり忘れていたのですが、4年前の2010年南アフリカ大会では決勝リーグに進出してベスト16入りを果たしていたんですね。

そのときの監督が「岡ちゃん」こと岡田監督、確かオシム監督が任期途中に脳梗塞で倒れたための緊急登板だったと思います。1998年のフランス大会に続いて2度目の代表監督就任です。

そのときに岡田監督が掲げた目標が、鮮明に記憶に残っています。

それは、

"ベスト4に入って 世界を驚かそう!"

というもの。

今にして思えば、この目標設定はすばらしかった。
どこがすばらしかったのか、少し検証してみましょう。

まず、サッカーの日本代表は1993年のドーハの悲劇を経て1998年フランス大会で歴史的なワールドカップ初出場を果たします。
2002年の日韓共同大会では地元の利もあって奇跡的に予選リーグを突破して初のベスト16入りを果たしました。
実力から言えば、2010年の段階でもう一度ベスト16を目標にしたってぜんぜんおかしくないほどまだまだ世界との差はあったと思うのですが、一度経験してしまっているので高揚感という意味ではイマイチ盛り上がりに欠けることは否めません。

となれば、次の目標はひとつ上のベスト8に置くのが順当なところでしょう。

ところが、それをもうひとつすっ飛ばしてベスト4に置いた。
かといって優勝とまでは言わない。
ベスト8でも、優勝でもなく、目標をベスト4に置いたところが絶妙だと思うのです。

当時の日本代表にとってベスト4というのは、いくらなんでも無理ではないかという目標、だけど優勝に比べればまだなんとかなる、めちゃくちゃがんばればもしかして、運やら何やらいろんなことが重なってうまくいけばひょっとするとなんとかなるのではないか?そんな感じの目標だったのではないでしょうか?

カンタンな目標ではダメ、だけどまったくムリな目標でもだめ、ものすごくむずかしいけどできたらすごい!やるだけやってみる価値はあるのではないか?この感じが、目標としてはもっとも盛り上がります。

そして岡田監督の最大のヒットは、そこに"世界を驚かそう" というフレーズをくっつけたところです。

「ベスト4」だけだったら、ただの無謀な目標にしかならなかったかもしれない、だけど、そこに"世界を驚かそう"というフレーズをくっつけたことによって、選手の頭のなかには超リアルな映像が浮かんだはずなのです。

そう、世界の人たちが「えええーーーっ」ってなってる映像が。

この映像によって、一気に気分が盛り上がり「いいね、おもしろそうだね、やっちゃおうか!」ってなったのではないかと思うのです。

わたしは、これが「ビジョンの力」だと思っています。

ビジョンとは「未来像」のこと。
共通の未来を、映像として共有することがチームにとてつもなく大きな力を与えるのです。
これは、サッカーであれ、企業であれ、まったく同じことです。

劇的な力を発揮したチームには、目標だけでなく必ず「ビジョン」があります。

前回ワールドカップで優勝した「なでしこジャパン」には、金メダルをとって"女子サッカーをメジャーにする"という長年抱いてきたビジョンが、
昨年、奇跡の日本一に輝いた野球の楽天イーグルスには、日本一になって"東北を元気にする"という何がなんでも達成したいビジョンがあったのです。

わたしのクライアント企業も、

「街のきれいコンサルタントになろう」と決めた清掃用品のレンタル会社。
SSNO1ビジネスパートナーになる」と決めたガソリンスタンドの夜間業務の代行会社。
「親会社を超えた営業会社になって、ノウハウを逆輸出しよう」を合言葉にした某大手企業の子会社。

たくさんの企業がビジョンを明確に言葉にして共有することで、それまでとは見ちがえるようにチーム力がアップして素晴らしい結果を出すことに成功しています。

さらに、ビジョンはチームの行動にも明確な基準を与えます。

きっと、当時の岡田ジャパンのトレーニングでは「そんなシュートじゃあ、世界は驚かないよ!」「おいおい、その程度でバテて世界を驚かせられるのか!」といった言葉が飛び交っていたのではないでしょうか。

個人的にはザッケローニ監督はとてもすばらしい監督だと思っています。

ただ、今回のワールドカップに関しては本田が個人的に「優勝を狙います」とビックマウスをかましてはいたものの、チームとしての明確なビジョンはあまり伝わってこなかったように感じます。

意外とそのへんにも思うような結果を出せなかった原因があったりするのかもしれません。

注:文中のサッカーの話は、例え話としてわたしの主観と想像で書いています。事実とは違う部分があるかもしれませんがご容赦いただければと思います。

2014年6月30日月曜日

リクルート式:社内の空気の変化と売上アップ



営業チーム強化コンサルタントの庄司充です

確たる信念もなくへらへらと生きてきたわたしではありますが、仕事に関してはひとつだけポリシーらしきものがあります。

それは"楽しくやる"いうことです。

とりたてて意識をしていたわけではないのですが、前職のときもなぜか他チームのメンバーから「庄司さんのプロジェクトって楽しそうですね~」と、しょっちゅう言われていたし、今でもクライアントの社員の方が「庄司さんに教わるようになってから仕事が楽しくなってきました!」と言ってくれます。

これはわたしにとっては最高のほめ言葉で、ものすごくうれしいことです。

そう言われてあらためて考えてみると、わたしはものすごく小心者で人から押しつけられる緊張感がひどく苦手なのだと思います。

子どものころから人を恫喝するような怖い人がいると、頭がまっ白になってしまって身動きが取れなくなってしまいます。

だから、星野監督のような怖い監督のもとでは働きたくないし、関西弁で参加者を罵倒しまくるおばはんのセミナーには出たくないし、北●鮮では絶対に幹部になれない自信があります。

わたしが楽しく仕事をすることを心がけているのは、そのほうが力を出せる人が多いと思うからです。
適度な緊張感は必要ですが、わたしのようなヘタレの人間にとって強すぎる緊張感はかえってその能力を下げてしまいます。
リラックスして「おもしろそう」「楽しそう」「やってみたい」で動いたほうがいい結果につながると思っているし、実際にそうやって実績を上げてきました。

よく、オリンピックの代表選手なんかが「楽しんできます」というようなコメントをすると「遊びじゃないんだ」と言って批判する人がいますが、あれは「緊張して力を発揮できないようなことがないようにリラックスして望みたい」という意味で言っているのでしょう。わたしにはものすごくよくわかります。

そんなわたしにとって、はじめて入った会社がリクルートだったことはほんとうにラッキーだったと思っています。

わたしが入社した80年代は、軍隊のような強制力で人を動かす会社がまだあたりまえのように存在していましたが、リクルートには人を恫喝して動かすような雰囲気はいっさいありませんでした。

ほかの営業会社が体育会系の部活動だとすれば、リクルートは文系のクラブ活動みたいな感じで、真剣なんだけど上司や先輩が絶対ではなく、新人でも意見をちゃんと聞いてもらえてもらえるし、まれに先輩や上司がまちがっていれば「すまんすまん、お前が正しかったわ」と、言ってくれるような社風でした。

リクルートのように急成長を続けている会社がそういう社風だったことは、自分の考えがまちがっていないという大きな自信になっています。

では、なぜリクルートは強制力を使わなくても急成長することができたのか?
それには3つの要素があると思います。

ひとつめは
・会社やチームで目指すものが明確に共有されていたこと

ふたつめは
・それを達成するための役割分担が明確にされていたこと

みっつめは
・活躍した人をみんなが称賛する空気があったこと

です。

たとえば、「本社ビルの前の通りは、 リクルート通りと言われるぐらいの会社になろう!」そのために「まず今年度は、全社一丸で1000億を達成しよう!」といったものすごくわかりやすくて盛り上がるビジョンがいつも掲げられていて、営業所の新人営業マンにいたるまで社員全員にしっかりと共有されていました。

掲げるだけでなく、つねに全社、営業所、個人の進捗がわかるようになっていて、ワッショイワッショイやりながら数年で次々とビジョンを実現させていく、活躍した人は新人であっても全社レベルで表彰してもらえる、そんな感じでした。

上記の3つの要素がそろっていると、メンバーには自然にチームに対する貢献意欲と責任感が生まれます。貢献意欲と責任感が生まれれば、人は自ら動くことができるのです。

逆に、ぜんぜんやりがいを感じられなくて、ほとんどの社員が生活のためにいやいや働いているような会社では社員を動かすために「強制力」が必要になってしまいます。

リーダーの仕事は社員が納得して働き、力を十二分に発揮できる環境をつくることです。

それができるのはリーダーしかいないのです。
わたしの仕事はリーダーに環境のつくり方を教えることです。

現に、コンサルティングが進んでいくと、わたしのクライアントの社長さんたちはほとんど怒らなくなります。

会話が明るくなり、冗談が増え、社内の雰囲気が見ちがえるようによくなります。
そんな社内の空気の変化と比例して売上もアップしていくのです。

2014年6月23日月曜日

マーケティングのキーは「誰に」「何を」「なぜ」を明確に!



「ありがとうございます! ほんとうに助かりました。」
「いえいえ、よかったですねえ。」

待合室で待っている間、奥の診療室からはこんな会話が何度も聞こえてきました。
吉見さんの事例でおなじみの、亀まんねん「いとう歯科」での話です。

先日、差し歯をつくってもらうために、はじめておじゃましてみたのです。
いとう歯科は、もともとわたしが住んでいたところからわりと近所にあったのですが、線路の反対側だったこともあって吉見さんのお話を聞くまでは正直まったく知りませんでした。

西荻窪の駅を出て、約7,8分歩いたところを一本脇道に入ると車の通りのほとんどない閑静な住宅街が広がります。
いとう歯科は、まさにその一角にありました。

ちょっとなつかしい感じの玄関を入るとほのかにやさしいアロマの香り、待合室には先客が3人、みなさん70代から80代ぐらいのご年配の方々がいらっしゃいました。

建物自体は古いけど、きれいに整頓された室内では木目調のスピーカーから落ちついたクラシック音楽が心地よい音量で流れています。
年配の方々がすごしやすいようにエアコンも弱めの設定です。

いすに腰をおろすと、壁には伊藤先生手づくりの絵手紙や患者さんの喜びの声があちらこちらに張られています。
そして机の上には・・・ 出ました!水槽に入った亀くんと、「亀がやってきたものがたり」を写真と絵と文章でつづった冊子。

冊子に載っている当時の医院の写真を見ながらおばあさんがおじいさんに楽しそうに話しかけています。
「ほらほら、昔はこんな感じだったわよねえ。今は若先生がやってらっしゃるのよ。」

その後も、ほどよい感じで途切れることなく患者さんがやってきます。
すべて年配の方です。

なかには「10年ぶりなんですよ。最近スマホを見たら若先生が部分入れ歯をおやりになってるって書いてあったんで」なんていうハイカラなおばあさんもいらっしゃいます。

ここに来るとわたしなんかは超ヤングです。

想像はしていましたが、吉見さんのねらいが見事に具現化しているのを間近で見ることができて、思わず「お~っ」と心の中でうなってしまいました。

そのときふと頭に浮かんだことがありました。

それは

「もし、いとう歯科がなかったら、ここにいる皆さんはどこの歯医者さんに行っていたのだろう。」

ということです。

もちろん西荻窪にはたくさんの歯医者さんがあります。
でも、きっとどこに行ってもほかの歯医者さんでは近代的すぎて機能的すぎて、ここに来ているみなさんは若干の居心地の悪さを感じていたのではないだろうか、いとう歯科に来ているご年配の患者さんたちにとって、これほど安心して落ち着ける歯医者さんはなかったのではないだろうか、そんなふうに感じてしまうのです。

それぐらい客層とそれを迎える医院のつくりがみごとにマッチしているのです。

マーケティングを成功させるのにもっとも重要なことは、儲けるために策略的に心理学をつかうことではなく、想定したお客さんに喜んでもらうための「心づかい」や「思いやり」なのかもしれません。

いとう歯科は、高齢者の方々への配慮であふれていました。

きっかけは、駅前に新しい歯科医がどんどんできて患者さんがへってしまったことだと聞いています。
そのころは、どこにでもある「誰でも なんでも いらっしゃい」の歯医者さんだったそうで、3代目の伊藤先生が継ぐころには、特徴のない古さだけが目立つ歯医者になってしまっていました。
今の元気で幸せそうな伊藤先生からは姿からは想像できませんが、当時はそうとう悩んでいたそうです。

それを
「高齢者向け」「保険がきく」「入れ歯専門」にしぼったことで、静かな環境も、昔からやっていることも、ちょっと古めの室内もすべてがプラスに作用して近所のご年配の方々にとってかけがえのない唯一無二の歯医者さんになったのです。

「自分にできること」と「必要としてくれている人の想定」と、その「伝え方」がぴったり合えば、ビジネスはこんなにすばらしい結果を生むんだということを、あらためて実感することができました。

今回は、マネジメントの話からずれてしまいましたが、いとう歯科で起こっていたことをぜひ伝えたくなって書きました。

マーケティングのキーである「誰に」「何を」「なぜ」を明確にしてくれることでは、吉見さん、森川さんは日本でもトップクラスです。

売上が伸びずに悩んでいる小規模事業者や店舗経営者の方は、ぜひ相談されてみてはいかがでしょうか。

追記
帰り際に伊藤先生が「じつは、今後女房にも手伝ってもらうことにしたのですが、どんなふうにマネジメントしたらいいか今度相談させてください。」とおっしゃってくださいました。
だけど伊藤先生、奥様のマネジメントってのはもっとも難易度の高いスキルでっせ~(笑)

追記の追記
伊藤先生につくってもらった差し歯ができました。
以前、よその歯医者さんでつくってもらったのとはぜんぜんちがうカタチにびっくり、
さすがオリジナル!おかげで違和感なく食事もばっちりです。ありがとうございました。